杉浦孝宣は一般社団法人 不登校引きこもり予防協会としても活動しております。
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~『受け皿』としての公立高校~
前回は、シリーズの始めにということで私の簡単な人となりを紹介させていただきましたが、今回からはあらためて教育のあり方について考えていこうと思います。さて、今回のテーマは公立高校の『受け皿』的役目についてです。都立高校では、毎年五千人以上の中退者が出ているそうです。これだけ聞いても相当数であることが実感できますが、第一に私立高校の中退者データが含まれていないこと、第二に、都立高校補欠募集合格者が三百人程度ということを加味すると、由々しき結果が浮かび上がります。私立高校で毎年どのくらいの生徒が中退してしまっているかという明確なデータはありません。私立高校はそのようなデータを公表しないからです。このことから考えると、もしかすると都立高校の中退者数だけを見ることは全体の氷山の一角に過ぎないと言えるかもしれません。中途退学した生徒の進学先は、これから述べる「転校の難しさ」からして、私立の通信制高校など一部に限られてしまいます。先に挙げた都立高校補欠募集合格者の数からすると、残りの多くの生徒はどこの高校にも在籍していないことになります。私立高校のことも含めると、もしかしたら五桁に達する数の生徒が毎年「学校」に行かなくなっているのかもしれません。経験上、中退や不登校といった出来事は、突然やってきます。高校生の子どもを持つ親として、この問題は他人事ではありません。このような状況にある日本の高校教育に、私は何かしらの救いの手はないのだろうかと思っています。そこで常日頃私が思っていることは、「中退してしまった生徒にもう一回チャレンジさせてあげることは出来ないのか」ということです。私が考えるのは、例えば、都立高校の転・編入の枠をもう少し広げられないのか、ということです。前稿でも述べましたが、NPO教育支援の活動を通してよく都立高校への転学について相談を受けます。多いのは「私立から都立」への転校希望です。「ほとんど都立に進学するつもりでいたが落ちてしまった。滑り止めの私立には行きたくなかった。通ってみたら案の定自分には合わなくて都立に転校したい」。こういった場合、夏期の都立補欠募集を受験することが一番の近道かもしれません。しかし、現行の制度ではかなり難しい転校であるというのが現状です。自分の偏差値相当の学校に進学するのは難しいでしょう。その都立高校にとってその生徒が本当に必要かどうかを学校側は試験でみてきます。その学校が『欲しい』生徒しか合格はしないでしょう。募集数だけ必ず合格者がでるわけではないのです。チャンスも夏期・冬期・春期の三度のみです。かなりの対策も必要です。その結果が先のデータに如実に出ています。私立の側にも問題がある場合もあります。「(子どもが)私立高校から都立高校への転校を考えている。転学照会を書いてもらうように担任に頼んだが、『転学照会は一枚しか書かない、もし不合格になったら編入して下さい』と言われた」。編入とは一度高校を辞めることで、その学年の単位が無くなるので、確実に半年もしくは一年、同級生との卒業が遅れてしまいます。こうしてその生徒が転学に成功すれば問題がないように思えますが、もし失敗すると中退者がひとり生まれてしまいます。このようなケースを見ても、公立高校は中退者を転入させる枠をもっときちんと設けて、少しでも多くの教育機会を与えて欲しいと思っています。
<都立全日制 HR君の転学成功例 > 私立高校中退→通信制高校→都立全日制