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教育支援の現場から⑥ ~首都圏の転学事情~

杉浦孝宣は一般社団法人 不登校引きこもり予防協会としても活動しております。
杉浦への講演依頼・不登校相談も承っております。


ずいぶん気温も下がり年末に近づいてきました。
そろそろ受験勉強も本番といったシーズンになるのでしょうか。
受験生にとっては正念場ですが、新しい環境を求めている高校生にとってもまた、大切な時期です。
今回は、「高校転校」というテーマで話をさせていただきたいと思います。
さて、私どもNPO教育支援協会の窓口では、私立高校から公立高校への転校を希望する方からの相談が多く寄せられています。
東京都以外の方からも様々な相談が寄せられていますが、高校のシステムはその都道府県で異なり、転・編入の状況も様々です。
そこで、首都圏の埼玉・千葉・神奈川県の教育委員会に、高校中退の危機にある転学希望者に対して受け皿となりうる公立高校があるかどうか問い合わせてみたところ、東京都とは違った実態が浮かび上がってきました。
この三県の公立高校では、転入に関していくつかのはっきりとした基準が設けられていました。
親の転勤などによる一家転住、深刻ないじめなどの有無、そして経済的理由などです。
帰国子女や転勤などで、転学せざるを得ない。
元の高校でいじめに遭い通学できる状況ではない。
また、両親の離婚などで学費の高い私学に通うことができなくなってしまった。
こういった、ほぼやむにやまれないといった理由がなければ転学はできないということでした。
NPOで相談を受けた多くの方々は、このようなケースでの転学ではありません。
部活で、自分は一生懸命頑張りたいのに顧問の先生がやる気がなく反りがあわない。
吹奏楽部が魅力的で学校を選んだが、あまりにも授業のレベルが低く周りとなじめなかった。
部活推薦で入学したが、怪我をしてしまい私学を辞めざるを得なくなった。
こういった理由で転学を希望している生徒さんがいるのに、一家転住・いじめ・経済的事由でしか転学が認められないというのは、あまりにも封建的な制度なのではないのでしょうか。
それに比べると東京都では、そういった事由がなくても学期の終わりごとに転学試験があり、転校のチャンスが与えられています。
私の経験からすると、転校を希望している生徒さんは、学校全体に何か決定的な不満があるのではなく、大きな学校生活の中のごくごく小さな部分に理由があるようです。
こういった場合、学校という環境が変われば不登校といった問題も自然と解消されるケースが多く、実際にそういった生徒さんをたくさん見てきました。
私どもは、首都圏を対象とした教育相談を受けていますが、それは、都内に住んでいなくても、首都圏近郊に住んでいれば東京都の教育事情でもってご相談にお答えできるからです。
東京都以外に住まいのある方でも、都内に引っ越したり、また都内で働いていれば、都立高校を受験することができます。
公立高校は中退者のための受け皿という役割もあるはずです。
本来ならば、地元の公立高校に転校して、その高校で豊かな友情や感性を育む。
そして、その地域全体で次代の人材を育成していくというのが、理想の公立高校のあり方なのではないでしょうか。
東京都が先陣を切って高校中退問題、ひいてはニート・フリーター対策として高校転学をより身近なものにしているということには、大変な意義があると思います。
首都圏だけでなく全国的な規模で、このような教育支援が行われていくことを望んでいます。

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